伝熱・断熱は一級建築士 環境・設備のNo.4あたりで毎年出ます(結露はNo.2で出る年もあります)。問われるのは、熱伝導率・熱抵抗・熱貫流率の関係です。引っ掛けは、比例と逆数を取り違えさせる選択肢が多いです(断熱材を厚くすると熱貫流率が大きくなる、など)。まず3つの記号のつながりから押さえます。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| 熱伝導率 λ | 材料そのものの熱の伝えやすさ。小さいほど断熱性が高い。 |
| 熱抵抗 R | 熱の伝えにくさ。R=厚さ÷熱伝導率。厚いほど、λが小さいほど大きい。 |
| 熱貫流率 U | 壁全体の熱の通しやすさ。各層の熱抵抗の合計の逆数。小さいほど断熱性が高い。 |
熱貫流率を求めるときは、材料の熱抵抗だけでなく、室内側と屋外側の表面熱抵抗も合計に含めます(外壁で室内側0.11・外気側0.04m²K/Wが標準値)。断熱を強化すると熱抵抗Rは大きく、その逆数の熱貫流率Uは小さくなります。RとUは逆数の関係です。
熱貫流率は熱抵抗の合計の逆数です。合計の熱抵抗は、層を足す順番を入れ替えても変わりません。
だから、同じ材料・同じ厚さなら、断熱材を室内側に入れても屋外側に入れても、熱貫流率は変わりません。位置を変えても断熱性能(U値)は同じです。
窓は壁より熱が逃げやすい弱点です。複層ガラス・Low-Eガラス・樹脂サッシで熱貫流率を下げます。
複層ガラスの中空層は、空気をはさんで熱の伝導と対流をおさえます。ただし熱の伝わり方には伝導・対流・放射の3つがあり、放射は真空でも伝わります。そのため中空層を真空にしても放射による熱移動が残り、熱貫流率は0になりません。放射はLow-E膜(特殊な金属膜)で抑えます。
日射をさえぎるときは、ブラインドを室外側に置くほうが効きます。室内側に置くより、開口部の日射熱取得率が小さくなります。
結露は、空気が冷やされて含みきれなくなった水蒸気が水になる現象です。その境目の温度が露点温度です。
表面結露は、室内側の壁や窓の表面温度が露点温度を下回ると起こります。断熱を強化して表面温度を下げないことが対策です。
内部結露は、壁の中に入った水蒸気が冷えて凝縮する現象です。防ぐには、断熱材の室内側に防湿層を設けて、水蒸気が壁の中へ入るのを手前で止めます。
過去10年で繰り返された論点を、正しい記述(○)と引っ掛け(×)で並べます。
| 記述 | ○× |
|---|---|
| 外壁を構成する各部材の熱抵抗が大きくなると、熱貫流率は小さくなる | ○ |
| 同じ材料・厚さなら、断熱材を室外側にするほうが熱貫流率は小さくなる | × |
| 繊維系断熱材は、含水率が増加すると断熱性能が向上する | × |
| グラスウールの熱伝導率は、かさ比重(密度)が大きいほど大きくなる | × |
| 壁体表面の対流熱伝達率は、風速が大きいほど大きくなる | ○ |
| 複層ガラスの中空層を真空にすれば、熱の移動はなくなり熱貫流率は0になる | × |
| 内部結露を防ぐ防湿層は、断熱材の屋外側に設ける | × |
×を正しく直すと、断熱材の位置を変えても熱貫流率は変わらない/断熱材は濡れると(含水率増で)断熱性能が低下する/グラスウールは密度が大きいほど熱伝導率は小さい/真空でも放射が残るのでUは0にならない/防湿層は断熱材の室内側、です。
伝熱・断熱は、記号の関係と開口部・結露から毎年問われています。正解番号は建築技術教育普及センターの公表正答によります。
| 年度 | No. | 正解 | 論点/解説 |
|---|---|---|---|
| 令和7年(2025) | 4 | 4 | 開口部の伝熱(複層・Low-E) |
| 令和6年(2024) | 4 | 4 | 熱伝導率・熱貫流率 ※No.5(正解3)で断熱・気密計画も出題 |
| 令和5年(2023) | 4 | 3 | 外壁の内部温度分布(伝熱・結露)※解説は順次追加予定 |
| 令和4年(2022) | 4 | 1 | 建築物の伝熱 ※No.2(正解4)結露も出題 |
| 令和3年(2021) | 4 | 3 | 建築物の伝熱(断熱材の含水率)※解説は順次追加予定 |
| 令和2年(2020) | 2 | 1 | 外壁の熱貫流率(断熱位置でU不変)※解説は順次追加予定 |
| 令和元年(2019) | 4 | 2 | 建築物の伝熱 ※解説は順次追加予定 |
| 平成30年(2018) | 2 | 4 | 冬期の結露(表面・内部結露)※解説は順次追加予定 |
| 平成29年(2017) | 4 | 4 | 伝熱(熱伝導率・温度分布の計算)※解説は順次追加予定 |
| 平成28年(2016) | 4 | 4 | 伝熱(グラスウールの熱伝導率と密度)※解説は順次追加予定 |
断熱材を厚くすると、壁の熱貫流率は大きくなる?
小さくなります。断熱材を厚くすると熱抵抗が大きくなり、その合計の逆数である熱貫流率は小さくなります。熱が逃げにくくなります。
複層ガラスの中空層を完全な真空にすると、熱貫流率は0になる?
なりません。真空は伝導と対流を止めますが、放射は真空でも伝わるため熱の移動が残ります。だから熱貫流率は0にはなりません(放射はLow-E膜で抑えます)。
内部結露を防ぐ防湿層は、断熱材の屋外側に設ける?
違います。防湿層は断熱材の室内側に設けます。冬は室内のほうが水蒸気が多いため、室内側で水蒸気の侵入を手前で止めます。
出典・参考
※ このページの確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
断熱材を厚くすると、熱抵抗は大きくなり、その逆数の熱貫流率は小さくなります。「厚くすると熱貫流率が大きくなる」は逆で誤りです。
また、中空層を真空にしても放射は残るので、熱貫流率は0にはなりません。結露を防ぐ防湿層は、断熱材の室内側(高温・高湿側)に設けます。屋外側ではありません。