建築史は一級建築士 学科Ⅰ(計画)の日本建築史(No.2)・西洋建築史(No.3)・住宅作品(No.12)で、過去10年ほぼ毎年出ます。問われるのは「建築物×様式×時代(住宅作品は×設計者)」の組合せで、引っ掛けは様式・設計者のすり替え(建築物名は正しいのに中身を別物にする)が多いです。様式ごとに代表建築をぶら下げて覚えます。
建築史は、日本・西洋の代表的な建築物が、どの様式・時代(住宅作品は誰の設計)に属するかを問う分野です。
誤りの選択肢は、ほとんどが様式・設計者のすり替え。建築物の名前は実在のとおりで、様式や特徴だけを別物に変えてきます。
だから「名前を知っている」だけでは外します。建築物を様式・時代とセットで覚えましょう。以下、日本→西洋→住宅作品の順に整理します。
本殿や仏堂、住宅の形式で分類します。切妻・平入りか妻入りか、組物や柱の扱いが見分けの軸です。
| 様式 | 特徴 | 代表 |
|---|---|---|
| 神明造 | 切妻造・平入り・掘立柱 | 伊勢神宮 |
| 大社造 | 切妻造・妻入り・掘立柱(古い形式) | 出雲大社本殿 |
| 住吉造 | 切妻造・妻入り。内陣と外陣に分かれる | 住吉大社本殿 |
| 八幡造 | 前後2棟を相の間でつなぐ | 宇佐神宮上宮本殿 |
| 権現造 | 本殿と拝殿を石の間でつなぐ。入母屋・装飾的 | 日光東照宮 |
本殿形式では流造(屋根の前方が長く伸びる)が最も多いとされます。妻入り=大社造・住吉造、平入り=神明造・流造、で束ねると整理しやすいです。
| 様式 | 特徴 | 代表 |
|---|---|---|
| 和様 | 装飾が少なくシンプル | 平等院鳳凰堂・当麻寺本堂 |
| 大仏様 | 貫を多用し挿肘木。豪快で雄大 | 東大寺南大門・浄土寺浄土堂 |
| 禅宗様(唐様) | 軒反りが強く繊細。弓欄間など装飾的 | 円覚寺舎利殿・功山寺仏殿 |
| 折衷様 | 和様に大仏様・禅宗様を取り入れた様式 | — |
大仏様(豪快・貫)と禅宗様(繊細・軒反り)は鎌倉期の新様式で、入れ替えで狙われます。東大寺南大門=大仏様、円覚寺舎利殿=禅宗様を固定で。
| 様式 | 特徴 | 代表 |
|---|---|---|
| 寝殿造 | 円柱・身舎と廂。壁が少なく御簾・几帳で仕切る(平安貴族) | 現存なし(絵巻物で確認) |
| 書院造 | 面取り角柱・押板・帳台構・付書院・明障子 | 慈照寺東求堂同仁斎(書院の原型)・二条城二の丸御殿 |
| 数寄屋造 | 面皮柱・長押を回さない・土塗壁。茶室の意匠を取り入れ柔らかい | 桂離宮 |
| 草庵茶室 | 侘びを追求した小規模な茶室 | 妙喜庵待庵(千利休) |
そのほか、斜面に床を張り出す懸造(投入堂・東大寺二月堂・清水寺本堂)、現存最古級の民家(箱木家住宅)も出ます。
時代順に、特徴の核(アーチ・ドーム・窓・装飾)と代表建築を並べます。
| 様式 | 特徴 | 代表建築 |
|---|---|---|
| 古代ギリシア | 柱とオーダー(ドーリア式など)。窓は少なく入口から採光 | パルテノン神殿 |
| 古代ローマ | 石積みのアーチ・ヴォールト・ドーム | パンテオン・コロッセウム |
| ビザンチン | ペンデンティヴで支える大ドーム・集中式 | ハギア・ソフィア・サン・マルコ大聖堂 |
| ロマネスク | 半円アーチ・重厚で厚い壁・小さな窓 | ピサ大聖堂・シュパイヤー大聖堂 |
| ゴシック | 尖頭アーチ・リブヴォールト・フライングバットレス・バラ窓 | ノートルダム大聖堂・シャルトル・アミアン大聖堂 |
| ルネサンス | 古典の再生。調和・均整・左右対称 | フィレンツェ大聖堂(ブルネレスキ)・サン・ピエトロ大聖堂 |
| バロック | 劇的な動き・曲線・過剰な装飾。楕円平面など | サン・カルロ・アッレ・クァットロ・フォンターネ聖堂・ヴェルサイユ宮殿(鏡の間) |
近代には中世ゴシックを復興したゴシック・リヴァイヴァル(ネオゴシック)もあり、代表は19世紀に再建されたウェストミンスター宮殿(イギリス国会議事堂)です。
計画No.12では、近代・現代の住宅作品について作品名と設計者・特徴の組合せが問われます。
説明文が正しく聞こえても、結びつく設計者や構成が1つだけ入れ替わっていることがあります。作品=設計者のペアで覚えるのが対策です。
各年の具体的な作品は、令和6年 No.12・令和5年 No.12の解説で確認してください。
建築史は計画のNo.2(日本史)・No.3(西洋史)を中心に、年により伝統木造・保存再生・建造年代順でも問われています。正解番号は建築技術教育普及センターの公表正答によります。
| 年度 | No. | 正解 | 論点/解説 |
|---|---|---|---|
| 令和7年(2025) | 2・3 | 2/1 | 日本建築史(東求堂=書院造)/西洋建築史 |
| 令和6年(2024) | 2・3 | 3/4 | 日本建築史(飛雲閣=桃山)/西洋建築史(鏡の間=ヴェルサイユ) |
| 令和5年(2023) | 2 | 2 | 日本建築史(円覚寺舎利殿=禅宗様) |
| 令和4年(2022) | 3 | 2 | 建築物の形態・構造的特徴 ※No.2は都市史(条坊制ほか)。解説は順次追加予定 |
| 令和3年(2021) | ― | ― | 建築史の単独出題は薄め(No.2は海外都市の都市史) |
| 令和2年(2020) | 2 | 3 | 日本の歴史的な建築物 ※解説は順次追加予定 |
| 令和元年(2019) | 2・3 | 4/1 | 日本建築史(神社の造り)/歴史的な建築物 ※解説は順次追加予定 |
| 平成30年(2018) | 2 | 1 | 伝統的木造建築物の屋根 ※解説は順次追加予定 |
| 平成29年(2017) | 2・3 | 4/4 | 建築物の保存・再生/建造年代順 ※解説は順次追加予定 |
| 平成28年(2016) | 3 | 3 | 歴史的な建築物 ※解説は順次追加予定 |
直近3年の代表的な引っかけ:R7 No.2=東求堂同仁斎を「数寄屋造」(正=書院造)/R6 No.3=ウェストミンスター宮殿に「鏡の間・バロック」(正=ヴェルサイユ宮殿。ウェストミンスターはゴシック・リヴァイヴァル)/R5 No.2=円覚寺舎利殿を「大仏様」(正=禅宗様)。
混同しやすい様式
どちらも鎌倉時代の新様式。大仏様は貫を多用した豪快な造り、禅宗様は軒反りが強く繊細。代表は大仏様=東大寺南大門、禅宗様=円覚寺舎利殿です。
ロマネスクは半円アーチで重厚・壁が厚く窓が小さい。ゴシックは尖頭アーチとフライングバットレスで壁を薄くでき、高く明るい(バラ窓)。「半円か尖頭か」で見分けます。
書院造は格式を整えた住宅様式。数寄屋造は、その書院造に茶室の意匠(面皮柱・土塗壁)を取り入れて柔らかくしたものです。
円覚寺舎利殿は大仏様の代表的な建築物である。〇か×か。
×。円覚寺舎利殿は禅宗様の代表です。大仏様の代表は東大寺南大門。令和5年 No.2 のすり替えです。
慈照寺東求堂同仁斎は、現存最古級とされる書院造(書院の原型)である。〇か×か。
〇。書院の原型とされます。令和7年 No.2 は、これを「数寄屋造」とした誤りでした。
ウェストミンスター宮殿は、鏡の間をもつバロック様式である。〇か×か。
×。それはヴェルサイユ宮殿の特徴。ウェストミンスター宮殿はゴシック・リヴァイヴァルの国会議事堂です。令和6年 No.3 の取り違え。
尖頭アーチ・フライングバットレス・バラ窓を特徴とするのはロマネスク様式である。〇か×か。
×。それはゴシック様式です。ロマネスクは半円アーチで重厚・壁が厚いのが特徴です。
建築物は「名前」ではなく「様式×時代(住宅作品は設計者)」をセットで覚える。これが建築史(計画No.2・3・12)の攻略です。
引っかけは取り違え。鏡の間=ヴェルサイユ、クリアストーリー=教会堂、東求堂=書院造、と固定で押さえましょう。
参考(実ページで確認)
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
建築史の誤りは、ほぼ「建築物名は正しいのに、様式・時代・設計者だけが別物にすり替えられている」形で出ます。
「聞いたことがある名前だ」で判断すると外します。建築物を見たら、必ず様式・時代(住宅作品は設計者)が合っているかを照合してください。
常連の引っかけは、円覚寺舎利殿(禅宗様)・東求堂同仁斎(書院造)・ウェストミンスター宮殿(ゴシック・リヴァイヴァル)・「鏡の間」=ヴェルサイユ宮殿です。