防火・防災は一級建築士 環境・設備のNo.5で、過去10年は毎年1問出ます。問われるのは、火災時に煙がどう動くか、排煙でどう制御するか、人をどう逃がすかです。引っ掛けは、煙の動きや排煙・加圧の役割を逆にした選択肢が多いです(加圧防排煙で経路を負圧にする、自然排煙は排煙口だけで決まる、など)。まず煙の動きから押さえます。
火災が進むと、ある時点で一気に燃え広がるフラッシュオーバーが起こり、酸素濃度が急に下がります。
煙は高温で上昇し、天井に達して水平に広がり、やがて煙層が下がってきます。流れる速さは、水平方向で毎秒0.3〜0.8m、上方向(階段室など縦の空間)で毎秒3〜5mです。縦方向の煙は人の歩く速さよりずっと速く、階段や吹抜けは煙突効果で煙の通り道になります。
排煙は、煙を屋外へ出して避難経路を守るしくみです。3つの考え方があります。
| 方式 | しくみ |
|---|---|
| 自然排煙 | 天井付近の排煙口から煙の浮力で排出。出ていく分の給気(外気の入口)が必要で、給気がないと排煙は進まない。 |
| 機械排煙 | 排煙機(ファン)で煙を吸い込み、強制的に屋外へ出す。火災室の圧力を下げ、他空間への拡散も防ぐ。 |
| 加圧防排煙 | 付室や階段室に給気して正圧(加圧)にし、火災室からの煙の侵入を防ぐ(加圧するのは避難経路で、火災室ではない)。 |
避難経路は、ふさがれても逃げられるよう二方向避難を基本にします。在館者が安全に逃げ切れる避難時間の確保や、避難安全検証法の考え方も問われます。
避難時の歩行速度は、明るさ(平均照度)が下がると遅くなります。煙や停電で見えにくくなると、避難はさらに難しくなります。
過去10年で繰り返された論点を、正しい記述(○)と引っ掛け(×)で並べます。
| 記述 | ○× |
|---|---|
| 加圧防排煙方式は、階段室や付室を機械給気で正圧にして煙の侵入を防ぐ | ○ |
| 吸引型の機械排煙方式は、火災室の圧力を下げて他空間への煙の拡散も防ぐ | ○ |
| 煙の上方向(垂直)の流動速度は、水平方向の流動速度より速い | ○ |
| 自然排煙方式の効率は、給気の経路によらず、排気開口部の位置と面積だけで決まる | × |
| フラッシュオーバーは、室内の酸素が急増して起こる現象である | × |
| 安全な避難のため、原則として二方向避難経路を確保する | ○ |
| 加圧防排煙は、火災室を正圧にして煙を閉じ込める方式である | × |
×を正しく直すと、自然排煙は給気の経路にもよる(給気が必要)/フラッシュオーバーでは可燃ガスが一気に着火し酸素は急減する/加圧防排煙は避難経路(付室・階段室)を正圧にする(火災室ではない)、です。
防火・防災は、煙の動きと排煙・避難から毎年No.5で問われています。正解番号は建築技術教育普及センターの公表正答によります。
| 年度 | No. | 正解 | 論点/解説 |
|---|---|---|---|
| 令和7年(2025) | 5 | 4 | 火災時の煙制御(自然排煙・加圧防排煙) |
| 令和6年(2024) | 5 | 3 | 建築物における防火・防災 |
| 令和5年(2023) | 5 | 1 | 建築物における防火・防災 |
| 令和4年(2022) | 5 | 3 | 建築物における防火・防災 |
| 令和3年(2021) | 5 | 4 | 建築物における防火・防災 ※解説は順次追加予定 |
| 令和2年(2020) | 5 | 1 | 建築物における防火・防災 ※解説は順次追加予定 |
| 令和元年(2019) | 5 | 1 | 建築物における防火・防災 ※解説は順次追加予定 |
| 平成30年(2018) | 5 | 3 | 建築物における防火・防災 ※解説は順次追加予定 |
| 平成29年(2017) | 5 | 1 | 火災時の煙制御 ※解説は順次追加予定 |
| 平成28年(2016) | 5 | 3 | 建築物における防火・防災 ※解説は順次追加予定 |
加圧防排煙は、付室や階段室を負圧にして煙を吸い出す方式?
違います。加圧防排煙は付室・階段室に給気して正圧(加圧)にし、火災室からの煙の侵入を防ぐ方式です。加圧するのは避難経路で、火災室ではありません。
階段室に流れ込んだ煙の上昇速度は、毎秒1〜2m程度?
もっと速いです。縦方向の煙は毎秒3〜5mで、人の歩く速さ(約0.5m/s)よりずっと速く上昇します。水平方向は0.3〜0.8m/s程度です。
自然排煙は、排煙口の位置と面積だけで効率が決まる?
決まりません。出ていく煙の分だけ給気(外気の入口)が必要で、給気の経路がないと排煙は進みません。
出典・参考
※ このページの確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
煙は上昇して天井で広がります。縦の空間(階段室)の煙は毎秒3〜5mと速く、水平方向(0.3〜0.8m/s)よりずっと速いです。
自然排煙でも、出ていく煙の分だけ給気が必要で、排気口の位置・面積だけでは決まりません。加圧防排煙は避難経路(付室・階段室)を正圧にして煙を入れない方式で、火災室を加圧するのではありません。