建築士試験 解説ノート

建築士試験 解説ノート
  1. HOME
  2. 過去問解説
  3. 一級建築士 計画
  4. > ディフェンシブルスペースとは

ディフェンシブルスペース(まもりやすい空間)とは|ニューマンの4要素とCPTEDとの違い・一級建築士 計画での問われ方

ディフェンシブルスペース(まもりやすい空間)とは、住民が「自分たちの場所」と感じて自然に守れるように設計された住空間のことです。

建築家のオスカー・ニューマンが、1972年の著書『まもりやすい住空間』で示した考え方です。

カメラや警備員で守るのではなく、空間のつくり方そのもので犯罪を起こりにくくする、という発想です。

試験では、4つの要素の内容と、パブリックからプライベートへの段階的な空間構成、CPTEDとの関係が問われます。

ニューマンの4つの要素

ニューマンは、住空間を守りやすくするために、次の4つに配慮した物理的な設計が必要だとしました。

要素 内容
領域性(縄張り意識) 境界を区切ったり敷地を分割したりして、「ここは自分たちの場所」という意識を住民にもたせる
自然監視性 窓の配置や向きを工夫し、住民が周囲を自然に見渡せるようにする
イメージ(愛着) 建物の外観を画一的にせず美しく保ち、管理が行き届かない印象(荒廃のイメージ)を避ける
近接性(周辺環境) 商業施設や公共施設など、人の目がある安全な場所の近くに住空間を置く

この中でも、領域性と自然監視性が中心の柱になります。

パブリックからプライベートへの段階的な空間構成

ディフェンシブルスペースの核心は、空間を一気に「外」と「中」に分けないことです。

道路などのパブリックな空間から、住戸というプライベートな空間まで、間に段階を設けます。

外(パブリック)→ 内(プライベート)へ段階的に絞り込む パブリック 道路・公園 セミパブリック 共用通路・広場 セミプライベート 棟ごとの共用部 プライベート 住戸 奥へ進むほど、よそ者は目立ち、住民の管理意識・自然な見守りが及ぶ

具体的には、共用の通路や広場(セミパブリック)、棟ごとの共用部(セミプライベート)を挟みます。

こうして外から内へ少しずつ絞り込むと、よそ者が奥へ進むほど目立ち、住民は「ここまでは自分たちの管理が及ぶ」と感じられます。

段階を踏ませる空間構成そのものが、領域意識と自然な見守りを生む仕組みです。

プルーイット・アイゴーが示したもの

ニューマンの理論のきっかけになったのが、アメリカのプルーイット・アイゴーという団地です。

1950年代に建てられた高層の公営住宅で、だれの場所でもない広大な共用空間と、見通しのきかない長い廊下を抱えていました。

住民が管理意識をもてない空間が犯罪や荒廃を招き、最終的に1972年から爆破解体されました。

ニューマンは、この失敗を「開放的で匿名的な空間が犯罪を生んだ」と分析し、まもりやすい空間という考え方にまとめました。

CPTEDとの違い

防犯の問題では、ディフェンシブルスペースとCPTED(防犯環境設計)がよく一緒に出ます。

CPTEDは、ニューマンの「防御可能な空間」の理論から発展した、設計で犯罪を防ぐ手法の体系です。

共通の柱は、領域性と監視性の2つです。

ディフェンシブルスペースが「住民が自分の場所として自然に守る」という住空間の原理なのに対し、CPTEDはそれを含めて実務的な手法に整理したものと押さえます。

CPTEDの4手法(監視性の確保・接近の制御・領域性の強化・被害対象の強化)は、CPTED(防犯環境設計)のページで確認できます。

試験ではどう問われるか

一級建築士 計画では、人の行動や防犯に配慮した計画として出ます。問題文は建築技術教育普及センターの公式PDFで確認できます。

年度・No. 問われ方/引っかけ
一級 令和3年 No.6 ニューマンが、境界と見通しのよさで住民が「自分たちの場所」と感じる環境をまもりやすい空間と定義(正しい記述)
一級 令和6年 No.4 ニューマンの理論でパブリック→プライベートの段階的な空間構成を採用(正しい記述)
一級 令和4年 No.7 プルーイット・アイゴーを「開放的な低層住宅で犯罪が大幅低下した成功例」とした=誤り(実際は高層団地・問題で解体)

まちがえやすいポイント

用語と提唱者・内容の取り違えが狙われます。ディフェンシブルスペース(まもりやすい空間)はオスカー・ニューマンで、段階的な空間構成で住民の領域意識を活かす考え方です。

事例の評価の反転にも注意します。プルーイット・アイゴーは、犯罪を抑えた成功例ではなく、問題が生じて解体された失敗の事例です。「低層で成功した」と書いてあれば誤りです。

覚え方

  • ディフェンシブルスペース(まもりやすい空間)=オスカー・ニューマン。住民が自然に守れる住空間。
  • 4要素=領域性・自然監視性・イメージ(愛着)・近接性。中心は領域性と監視性。
  • 空間構成=パブリック→セミパブリック→セミプライベート→プライベートの段階的な絞り込み。
  • きっかけ=プルーイット・アイゴー(高層団地の失敗・解体)。CPTEDはここから発展した手法体系。

理解度チェック

Q.

ディフェンシブルスペース(まもりやすい空間)を提唱したのは誰?

オスカー・ニューマンです。住民が「自分たちの場所」と感じて自然に守れる住空間の考え方です。

Q.

ディフェンシブルスペースでは、空間を「公共」と「私的」の2つにはっきり分けるのが基本?

違います。パブリックからプライベートまで、間にセミパブリック・セミプライベートを挟んで段階的に構成するのが特徴です。段階を踏ませることで領域意識と自然監視が働きます。

Q.

プルーイット・アイゴーは、まもりやすい空間の成功例として知られている?

違います。だれの場所でもない共用空間や見通しの悪い廊下が犯罪・荒廃を招き、1972年から解体された失敗の事例です。この反省から理論が生まれました。

Q.

CPTEDとディフェンシブルスペースに共通する2つの柱は?

領域性と監視性です。CPTEDはニューマンの理論から発展した手法の体系で、この2つを共通の柱としています。

まとめ

ディフェンシブルスペースは、領域性・自然監視性・イメージ・近接性の4要素と、パブリックからプライベートへの段階的な空間構成によって、住民が自然に守れる住空間をつくる考え方です。試験では、提唱者(ニューマン)の取り違え、空間構成の理解、プルーイット・アイゴーの評価の反転、CPTEDとの関係に注意します。

出典・参考

  • 建築技術教育普及センター「一級建築士試験 学科の試験 学科I(計画)問題」各年度(令和3年・令和4年・令和6年ほか)。各用語の内容は問題本文に基づく。
  • オスカー・ニューマン『まもりやすい住空間―都市設計による犯罪防止』(湯川利和・湯川聡子 共訳)。原著『Defensible Space』(1972年)。
  • 「防犯環境設計(CPTED)」の考え方(ニューマンの理論から発展した防犯まちづくりの枠組み)。
建築士試験 解説ノート

編集・解説

建築士試験 解説ノート編集部

建築業界の実務経験をもとに、一級・二級建築士試験の「計画」を過去問から整理しています。運営者情報

Topへ >>