ディフェンシブルスペース(まもりやすい空間)とは、住民が「自分たちの場所」と感じて自然に守れるように設計された住空間のことです。
建築家のオスカー・ニューマンが、1972年の著書『まもりやすい住空間』で示した考え方です。
カメラや警備員で守るのではなく、空間のつくり方そのもので犯罪を起こりにくくする、という発想です。
試験では、4つの要素の内容と、パブリックからプライベートへの段階的な空間構成、CPTEDとの関係が問われます。
ニューマンは、住空間を守りやすくするために、次の4つに配慮した物理的な設計が必要だとしました。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 領域性(縄張り意識) | 境界を区切ったり敷地を分割したりして、「ここは自分たちの場所」という意識を住民にもたせる |
| 自然監視性 | 窓の配置や向きを工夫し、住民が周囲を自然に見渡せるようにする |
| イメージ(愛着) | 建物の外観を画一的にせず美しく保ち、管理が行き届かない印象(荒廃のイメージ)を避ける |
| 近接性(周辺環境) | 商業施設や公共施設など、人の目がある安全な場所の近くに住空間を置く |
この中でも、領域性と自然監視性が中心の柱になります。
ディフェンシブルスペースの核心は、空間を一気に「外」と「中」に分けないことです。
道路などのパブリックな空間から、住戸というプライベートな空間まで、間に段階を設けます。
具体的には、共用の通路や広場(セミパブリック)、棟ごとの共用部(セミプライベート)を挟みます。
こうして外から内へ少しずつ絞り込むと、よそ者が奥へ進むほど目立ち、住民は「ここまでは自分たちの管理が及ぶ」と感じられます。
段階を踏ませる空間構成そのものが、領域意識と自然な見守りを生む仕組みです。
ニューマンの理論のきっかけになったのが、アメリカのプルーイット・アイゴーという団地です。
1950年代に建てられた高層の公営住宅で、だれの場所でもない広大な共用空間と、見通しのきかない長い廊下を抱えていました。
住民が管理意識をもてない空間が犯罪や荒廃を招き、最終的に1972年から爆破解体されました。
ニューマンは、この失敗を「開放的で匿名的な空間が犯罪を生んだ」と分析し、まもりやすい空間という考え方にまとめました。
防犯の問題では、ディフェンシブルスペースとCPTED(防犯環境設計)がよく一緒に出ます。
CPTEDは、ニューマンの「防御可能な空間」の理論から発展した、設計で犯罪を防ぐ手法の体系です。
共通の柱は、領域性と監視性の2つです。
ディフェンシブルスペースが「住民が自分の場所として自然に守る」という住空間の原理なのに対し、CPTEDはそれを含めて実務的な手法に整理したものと押さえます。
CPTEDの4手法(監視性の確保・接近の制御・領域性の強化・被害対象の強化)は、CPTED(防犯環境設計)のページで確認できます。
一級建築士 計画では、人の行動や防犯に配慮した計画として出ます。問題文は建築技術教育普及センターの公式PDFで確認できます。
| 年度・No. | 問われ方/引っかけ |
|---|---|
| 一級 令和3年 No.6 | ニューマンが、境界と見通しのよさで住民が「自分たちの場所」と感じる環境をまもりやすい空間と定義(正しい記述) |
| 一級 令和6年 No.4 | ニューマンの理論でパブリック→プライベートの段階的な空間構成を採用(正しい記述) |
| 一級 令和4年 No.7 | プルーイット・アイゴーを「開放的な低層住宅で犯罪が大幅低下した成功例」とした=誤り(実際は高層団地・問題で解体) |
ディフェンシブルスペース(まもりやすい空間)を提唱したのは誰?
オスカー・ニューマンです。住民が「自分たちの場所」と感じて自然に守れる住空間の考え方です。
ディフェンシブルスペースでは、空間を「公共」と「私的」の2つにはっきり分けるのが基本?
違います。パブリックからプライベートまで、間にセミパブリック・セミプライベートを挟んで段階的に構成するのが特徴です。段階を踏ませることで領域意識と自然監視が働きます。
プルーイット・アイゴーは、まもりやすい空間の成功例として知られている?
違います。だれの場所でもない共用空間や見通しの悪い廊下が犯罪・荒廃を招き、1972年から解体された失敗の事例です。この反省から理論が生まれました。
CPTEDとディフェンシブルスペースに共通する2つの柱は?
領域性と監視性です。CPTEDはニューマンの理論から発展した手法の体系で、この2つを共通の柱としています。
ディフェンシブルスペースは、領域性・自然監視性・イメージ・近接性の4要素と、パブリックからプライベートへの段階的な空間構成によって、住民が自然に守れる住空間をつくる考え方です。試験では、提唱者(ニューマン)の取り違え、空間構成の理解、プルーイット・アイゴーの評価の反転、CPTEDとの関係に注意します。
出典・参考
※ このページの確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
用語と提唱者・内容の取り違えが狙われます。ディフェンシブルスペース(まもりやすい空間)はオスカー・ニューマンで、段階的な空間構成で住民の領域意識を活かす考え方です。
事例の評価の反転にも注意します。プルーイット・アイゴーは、犯罪を抑えた成功例ではなく、問題が生じて解体された失敗の事例です。「低層で成功した」と書いてあれば誤りです。