ロバート・ヴェンチューリの『建築の多様性と対立性』(1966年、ニューヨーク近代美術館刊)は、近代建築への反論として書かれた本です。
主張は、建築に複雑さと矛盾を認めることです。「単純なほどよい」「形は機能に従う」という近代建築の考えに対し、豊かさや曖昧さを肯定し、ポストモダン建築の先駆となりました。
近代建築を批判した側であって、純粋さを追求した側ではありません。試験では、この立場の取り違えが狙われます。
ヴェンチューリは、近代建築が掲げた単純化や純粋主義に対し、現実の建築はもっと複雑で矛盾を含むべきだと考えました。要素を切り捨てて純化するより、複数の意味や対立を抱え込んだほうが豊かになる、という立場です。
ミース・ファン・デル・ローエの「Less is more(より少ないことは、より豊かである)」をもじって、「Less is bore(より少ないことは、退屈である)」という言葉でも知られます。あれもこれもを許す両義的な建築を説きました。
この本は、近代建築(モダニズム)の純粋主義への反逆を、最も早く明快に示したものとされ、ヴェンチューリはポストモダン建築の父と呼ばれます。装飾や歴史的なモチーフ、文脈を建築に取り戻す流れにつながりました。
後の『ラスベガス』(1972年)では、商業的な看板やストリートを肯定し、「装飾された小屋」といった見方も示しています。
一級建築士 計画では、ヴェンチューリ本人の名ではなく、その主張がほかの人物の説明にすり替えられる誤り肢として出ます。問題本文は公式PDFで確認できます。
| 年度・No. | 問われ方/引っかけ |
|---|---|
| 一級 平成29年 No.4 | リンチ『都市のイメージ』の説明に「ラスベガスの記号論的分析」を当てた肢=誤り(その内容はヴェンチューリ『ラスベガスから学ぶ』) |
| 一級 令和5年 No.3 | ロッシ『都市の建築』の説明に「曖昧さ・複雑さ・多様な建築表現」を当てた肢=誤り(その内容はヴェンチューリ『複雑さと矛盾』) |
ヴェンチューリ=複雑さと矛盾。リンチ=5要素、ロッシ=類型学と集合的記憶、と切り分けると見抜けます。
『建築の多様性と対立性』は何を主張した?
建築に複雑さと矛盾を認めるべきだと主張しました。近代建築の「単純なほどよい」という純粋主義を批判し、ポストモダン建築の先駆となりました。
ヴェンチューリは近代建築をどう見た?
批判しました。単純化・純粋主義に反論し、豊かさ・曖昧さ・両義性を肯定しました。「Less is bore」という言葉でも知られます。
ヴェンチューリ『建築の多様性と対立性』(1966年)は、近代建築の単純化・純粋主義に反論し、複雑さと矛盾を建築に認めました。ポストモダン建築の先駆となった本で、「Less is bore」の言葉でも知られる、と押さえます。
出典・参考
※ このページの確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
立場がいちばん狙われます。ヴェンチューリは近代建築の単純化を批判し、複雑さと矛盾を認めてポストモダンの先駆となりました。
「単純さ・純粋さを追求した」「近代建築の純粋主義を擁護した」と書いてあれば誤りです。純粋主義に反論した側で、複雑と矛盾を肯定しました。