鉄骨部材の設計は一級建築士 学科Ⅳ(構造)の最頻出テーマです。過去10年(H28〜R7)でほぼ毎年、No.15〜18のどこかで複数問われます。降伏比・幅厚比・横補剛・細長比・許容応力度が対象です。
鉄骨部材の設計は、降伏比・幅厚比・横補剛・座屈の「大小の向き」を覚える分野です。
誤りの選択肢は、これらの大小関係を1か所だけ逆にしてあります。向きを理屈で押さえれば落としにくいテーマです。
| 項目 | 要点(向き) |
|---|---|
| 降伏比 | 降伏比(降伏点÷引張強さ)が小さいほど塑性変形能力が向上。塑性化が想定される部位には降伏比の小さい材料を使う |
| 幅厚比 | 局部座屈を防ぐための規定。基準強度F(降伏点)が大きいほど上限値は小さい(SN490B<SN400B)。塑性変形確保の上限はウェブよりフランジが厳しい |
| 横補剛 | 梁の横座屈を防ぐ。強度だけでなく剛性も必要。フランジ幅が大きいほど必要箇所は少ない。高強度(SN490B)ほど必要箇所は多い。均等間隔/端部主体の方法がある |
| 細長比・座屈 | 限界細長比は基準強度Fが大きいほど小さい。圧縮材の許容圧縮応力度は、座屈軸まわりの断面二次半径が小さいほど小さい(細長く座屈しやすい) |
| 許容曲げ応力度 | 横座屈で低下する。弱軸まわりに曲げを受けるH形鋼や角形鋼管柱は横座屈のおそれがなく、許容曲げ応力度を許容引張応力度と同じにできる |
| たわみ | 弾性たわみは剛性(ヤング係数・断面)で決まる。降伏点(強度)の高い鋼材を使っても弾性たわみは小さくならない |
鉄骨部材の設計では「強度の話」と「剛性・座屈の話」を分けるのが要点です。降伏点を上げても、たわみや座屈のしやすさ(剛性で決まる量)は変わりません。
過去10年で実際に出た記述です。大小の向きを1か所だけ逆にしてあります。
| 正誤 | 記述と出典 |
|---|---|
| × | 梁端部が塑性化するH形鋼梁は、降伏比が大きいほど塑性変形能力が向上する。 → 降伏比は小さいほど向上します〔R6 No.15〕 |
| × | 柱・梁に使用する鋼材の幅厚比の上限値は、SN400BよりSN490Bのほうが大きい。 → SN490Bのほうが小さい(厳しい)です〔R3 No.15〕 |
| × | 梁せい等が同一なら、フランジ幅が大きい梁ほど必要な横補剛の箇所数は多くなる。 → フランジ幅が大きいほど少なくなります〔R4 No.17〕 |
| × | 圧縮材の許容圧縮応力度は、座屈長さが同じ場合、断面二次半径が小さいほど大きくなる。 → 断面二次半径が小さいほど小さくなります〔R7 No.18〕 |
| × | 大スパンの梁に降伏点の高い鋼材を用いると、鉛直荷重による弾性たわみを小さくできる。 → たわみは剛性で決まり、強度では変わりません〔R5 No.17〕 |
| 〇 | 弱軸まわりに曲げを受けるH形鋼の許容曲げ応力度は、許容引張応力度と同じ値とできる。 → 正しい(横座屈のおそれがない)〔R7 No.18・R4 No.16〕 |
鉄骨部材の設計はNo.15〜18で毎年複数問われます。論点は降伏比・幅厚比・横補剛・座屈・たわみに集まります。正答は建築技術教育普及センターの公式正答によります。
| 年度・No. | 正答 | 問われた論点と引っかけ |
|---|---|---|
| R7 No.18 | 4 | 圧縮材の許容圧縮応力度を「断面二次半径が小さいほど大きい」とする誤り(小さくなる) |
| R6 No.15 | 2 | 降伏比を「大きいほど塑性変形能力が向上」とする誤り(小さいほど向上) |
| R5 No.17 | 4 | 降伏点の高い鋼材で「弾性たわみを小さくできる」とする誤り(たわみは剛性で決まる) |
| R4 No.17 | 1 | 横補剛を「フランジ幅が大きい梁ほど必要箇所が多い」とする誤り(少ない) |
| R3 No.15 | 2 | 幅厚比の上限値を「SN490BがSN400Bより大きい」とする誤り(SN490Bは小さい) |
| H28〜R2 | — | 同じ論点(降伏比・幅厚比・横補剛・限界細長比・許容応力度)がNo.15〜18の肢で繰り返し出題 |
※ 過去10年(H28〜R7)を確認し、鉄骨部材の設計はNo.15〜18で毎年複数問われています。R3〜R7は各問の解説へリンクしています(H28〜R2の解説は順次追加予定)。
降伏比は小さいほど粘る、幅厚比の上限は高強度ほど小さい、許容圧縮応力度は細いほど小さい、たわみは強度でなく剛性。
塑性化が想定される梁には、降伏比の大きい鋼材を用いるほど塑性変形能力が向上する。〇か×か。
×。降伏比は小さいほど塑性変形能力が向上します。
幅厚比の上限値は、SN400BよりSN490Bのほうが小さい(厳しい)。〇か×か。
〇。基準強度Fが大きいほど幅厚比の上限値は小さくなります。
大スパン梁に降伏点の高い鋼材を使えば、鉛直荷重による弾性たわみを小さくできる。〇か×か。
×。弾性たわみは剛性(ヤング係数・断面)で決まり、降伏点(強度)を上げても変わりません。
降伏比・幅厚比・横補剛・座屈の「向き」を固定し、たわみは剛性で決まると覚える。
降伏比は小さいほど粘り、幅厚比の上限は高強度ほど小さく、横補剛はフランジ幅が大きいほど少なく、許容圧縮応力度は細いほど小さい。強度と剛性を分けて考えれば、鉄骨部材の文章題は照合で解けます。
参考(実ページで確認)
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
降伏比は小さいほど粘る/幅厚比の上限は高強度ほど小さい/許容圧縮応力度は細い(断面二次半径が小さい)ほど小さい。この3つの向きが定番の引っかけです。
横補剛はフランジ幅が大きいほど少なく、たわみは強度でなく剛性で決まる。向きを固定で押さえてください。