建築士試験 解説ノート

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既存不適格と増築の緩和|独立部分・火熱遮断壁(一級建築士 法規)

既存不適格建築物とは、建てた当時は適法だったのに、その後の法改正で今の基準に合わなくなった建物のことです(建築基準法3条2項)。違反建築物ではありません。

増改築すると、原則は現行法に適合させます(遡及)。ただし、建物を区画すれば増築部分以外には遡及しない緩和があります。

その区画の方法が、独立部分・火熱遮断壁です。試験では、この緩和と「既存不適格=違反ではない」点が狙われます。

既存不適格と違反建築物はどう違うか

同じ「今の基準に合っていない」でも、合法か違法かが正反対です。

区分 中身
既存不適格建築物 建築時は適法。後の法改正で現行基準に不適合になった。是正命令の対象外(法3条2項)
違反建築物 建築時から法に違反。是正の対象

そのまま使い続ける分には現行法は遡りません。問題になるのは、増改築など手を加えるときです。

増築するときの緩和(独立部分・火熱遮断壁)

増改築では原則すべて現行法に合わせますが、次の方法で既存部分への遡及をやわらげます(法86条の7)。

  • 独立部分=建物を開口部のない耐火構造の床・壁で区画して別の独立部分にすれば、増築する独立部分以外には現行規定が遡及しません(令137条の14)。
  • 火熱遮断壁=耐火建築物等としなければならない特殊建築物の技術基準について、増築部分と既存部分を火熱遮断壁等(相互に火熱が伝わらないように区画する壁)で区画すれば、既存部分に当該技術基準が遡及しません。
  • 全体計画認定=一度に直せないとき、特定行政庁の認定を受けて段階的に工事できます。最後の工事に着手するまでは当該規定を適用しません(法86条の8)。

緩和を受ける増改築では、確認申請に既存不適格調書を添えます。構造関係では、増築面積が基準時の延べ面積の1/2を超えるかどうかで扱いが変わります。

過去問10年でどう問われたか

一級建築士 法規(学科Ⅲ)ではほぼ毎年No.8で出ます。引っかけは「遡及の範囲」と「緩和の条件」です。問題本文は公式PDFで確認できます。

年度・No. 問われ方/引っかけ
令和7年 No.8 開口部のない耐火構造の床壁で区画した独立部分の増築/火熱遮断壁で区画した部分の増築/全体計画認定の段階的工事
令和2年 No.12 構造の既存不適格で、増築面積が基準時の延べ面積の1/2を超えるかで扱いが変わる/既存不適格調書の添付
令和6年 No.4 既存不適格の自動車修理工場で、原動機出力を一定の範囲でしか変更できない

「既存不適格=違反ではない」「区画すれば増築部分以外に遡及しない」を軸にすると、各肢を判断できます。

まちがえやすいポイント

まず大前提です。既存不適格は違反建築物ではない。そのまま使う分には遡及しません。

「増築すると既存部分にも全部、現行法が遡及する」と書いてあれば誤りになりやすいです。開口部のない耐火構造の床壁や火熱遮断壁で区画すれば、増築する独立部分以外には遡及しません。

理解度チェック

Q.

既存不適格建築物は、是正命令の対象になる違反建築物?

違います。建築時は適法で、後の法改正で現行基準に合わなくなったものです(法3条2項)。違反建築物ではありません。

Q.

火熱遮断壁で区画すると、増築で何が変わる?

増築部分と既存部分を火熱遮断壁等で区画すれば、耐火建築物等の技術基準について、既存部分にその規定が遡及しなくなります。独立部分の考え方の一つです。

まとめ

既存不適格建築物は、適法に建てた後の法改正で現行基準に合わなくなった建物で、違反ではありません。増改築では原則現行法に適合させますが、開口部のない耐火構造の床壁や火熱遮断壁で区画した独立部分には遡及せず、全体計画認定で段階的に工事もできます。試験では「違反との混同」と「遡及の範囲」に注意します。

出典・参考(一次資料で確認)

  • 建築基準法第3条第2項(既存不適格建築物)・第86条の7(既存不適格の制限緩和)・第86条の8(全体計画認定)、建築基準法施行令第137条の2〜第137条の14(増改築の緩和・独立部分・火熱遮断壁)。条文本文はe-Govで確認。
  • 建築技術教育普及センター「一級建築士試験 学科の試験 学科III(法規)問題」平成28〜令和7年。出題内容は公式問題に基づく。
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編集・解説

建築士試験 解説ノート編集部

建築業界の実務経験をもとに、一級・二級建築士試験の「法規」を条文と過去問から整理しています。運営者情報

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