型枠工事は、一級建築士 施工のNo.9で毎年出るテーマです。
誤りの選択肢は、もっともらしい文章のまま安全寸法や強度の条件を1か所だけすり替えてきます。だから正しい基準と、条件の向き(高い・低いでどちらに動くか)をセットで覚えるのが対策になります。まず支保工の安全規定から整理します。
支保工は、固まる前のコンクリートと型枠の重さを支える仮設です。倒壊事故につながるため、労働安全衛生規則(第242条)で組み方が細かく決まっています。
| 項目 | 規定(安衛則第242条) |
|---|---|
| 水平つなぎ (高さ3.5m超のとき) | 高さ 2m以内ごとに二方向に設け、変位を防止する |
| 継いで使うときの接続 | 4本以上のボルトまたは専用の金具で継ぐ |
| 継ぎの本数制限 | パイプサポートを 3本以上継いで用いない |
引っかけは、水平つなぎを「3.5mごと」、継ぎボルトを「2本」とする数値の緩めです。水平つなぎは2m・継ぎは4本ボルトと覚えます。継ぎの「4本ボルト」と「3本以上継がない」は別々の規定なので、取り違えないようにします。
なお、型枠支保工用の鋼材の許容曲げ・圧縮応力は、降伏強さと引張強さの3/4のうち小さい方の2/3以下とします。
せき板(コンクリートに接する板)は、コンクリートが自立できる強度になるまで残します。外してよい時期は、コンクリートの材齢(日数)または圧縮強度で判定します。まず存置期間が動く2つの向きです。
1つ目は気温です。平均気温が高いほど硬化が速く、存置期間は短くなります。低いほど長くなります。
2つ目はセメントの種類です。高炉セメントB種などの混合セメントは、普通ポルトランドセメントより強度発現が遅く、存置期間が長くなります。
圧縮強度で判定するときの目安は次のとおりです(JASS5・公共建築工事標準仕様書)。
| 部位・条件 | 取外しの目安(圧縮強度) |
|---|---|
| 基礎・梁側・柱・壁のせき板 (取外し後に湿潤養生をする) | 5N/mm²以上 |
| 同上で (取外し後に湿潤養生をしない) | 10N/mm²以上 |
| スラブ下・梁下の支柱(支保工) (片持ち部分を除く) | 12N/mm²以上、かつ構造計算で安全を確認 |
引っかけは、湿潤養生をしない場合の10N/mm²を「5N/mm²」にする形です(平成28年・令和4年)。湿潤養生をしないほうが乾燥しやすいので、より高い強度まで残します。気温区分の境界値も狙われ、「25℃以下」と「25℃を超える」なら25℃ちょうどは低い側(25℃以下)の区分に入り、存置期間は長いほうになります。
側圧は、固まる前のコンクリートが型枠を外へ押す力です。型枠設計用の側圧は、求める位置より上の打込み高さ(ヘッド)×フレッシュコンクリートの単位容積重量を基本に考えます(JASS5)。そのうえで、次の条件で側圧は大きくなります。
存置期間と向きが逆になる点に注意です。気温が低いと、存置期間は長く・側圧は大きくなります。混同しないようにしましょう。
材料の仕様も問われます。コンクリート型枠用合板(JAS・第5条)のせき板は、打放し以外で表面B・裏面Cの品質、厚さ12mmが標準です。打放し仕上げに使う表面加工品も厚さ12mmが標準で、「9mm」とすると薄すぎる誤りになります(令和元年)。
床型枠用のフラットデッキには10mm程度のキャンバー(むくり)があり、短いスパンで使うとスラブ厚に影響するため注意します。水密を要する地中部分の貫通孔スリーブには、塩ビ管でなく鋼管などを用います(平成30年)。
| 論点 | 正しい記述(○)と、よくある誤り(×) |
|---|---|
| パイプサポートの継ぎ | ○ 4本以上のボルトで継ぐ/× 2本のボルトで継ぐ |
| 高さ3.5m超の水平つなぎ | ○ 高さ2m以内ごとに二方向/× 3.5mごとでよい |
| せき板の取外し(湿潤養生なし) | ○ 圧縮強度10N/mm²以上まで存置/× 5N/mm²でよい |
| 存置期間と気温・セメント | ○ 気温が高いほど短い・混合セメントは長い/× 気温が高いほど長い |
| 側圧の大小 | ○ 打込み速度が速い・温度が低い・スランプが大きいほど大きい/× 温度が高いほど大きい |
支保工は水平つなぎ2m・継ぎ4本ボルト・3本以上継がない、せき板は気温が高いほど短く・湿潤養生なしは10N/mm²、支柱は12N/mm²+構造計算、側圧は速い・低温・軟らかいほど大きい。数値の緩めと、存置・側圧で気温の向きが逆になる点に気づけるよう固定しておきましょう。
支柱の高さ3.5mの型枠支保工で、2本のパイプサポートを2本のボルトで継いで支柱とした。〔R7 No.9〕
×。継ぐときは4本以上のボルト(または専用金具)です。さらに3本以上継いで用いてはいけません。これが令和7年の正答(誤りの肢)でした。
高さ3.5mを超えるパイプサポートには、高さ3.5mごとに水平つなぎを設ければよい。〔R5 No.9〕
×。高さ2m以内ごとに二方向の水平つなぎを設け、変位を防止します(安衛則第242条)。
取外し後に湿潤養生をしない基礎のせき板は、圧縮強度が5N/mm²に達するまで存置すればよい。〔H28 No.9〕
×。湿潤養生をしない場合は乾燥しやすいので、圧縮強度10N/mm²以上まで存置します。5N/mm²は湿潤養生をする場合の値です。
コンクリートの打込み速度が速いほど、型枠に作用する側圧は大きくなる。〔R6・R2 関連〕
〇。打込み速度が速い・温度が低い・スランプが大きいほど側圧は大きくなります。存置期間とは気温の向きが逆になる点に注意します。
| 年度 | No. | 正解 | 主に問われた論点 |
|---|---|---|---|
| 令和7年 | 9 | 3 | パイプサポートの継ぎ(4本以上のボルト) |
| 令和6年 | 9 | 2 | せき板の存置期間(高炉B種・気温25℃) |
| 令和5年 | 9 | 3 | 支保工の水平つなぎ(2m以内ごと) |
| 令和4年 | 9 | 4 | せき板の取外し(湿潤養生・圧縮強度) |
| 令和3年 | 9 | 3 | 梁下支保工の取外し(供試体・強度) |
| 令和2年 | 9 | 3 | 浮かし型枠の固定(外部足場に固定しない) |
| 令和元年 | 9 | 2 | 打放し用せき板の厚さ(12mm) |
| 平成30年 | 9 | 3 | 水密部の貫通孔スリーブの材質 |
| 平成29年 | 9 | 3 | 梁下支保工の取外し(供試体の養生) |
| 平成28年 | 9 | 1 | せき板の存置(湿潤養生なしは10N/mm²) |
※ 過去10年分(平成28年〜令和7年)を確認。型枠工事は毎年No.9で出題され、支保工の安全規定・せき板の存置期間と取外し強度・側圧・材料がくり返し問われます。令和2年以前の解説リンクは順次追加予定です。
混同しやすいポイント
パイプサポートを継ぐときは4本以上のボルト(または専用金具)。一方で、継ぎの本数は3本以上にしてはいけません。「4本ボルト」と「3本以上継ぎ禁止」を取り違えないよう、別々に覚えます。
取外し後に湿潤養生をするなら圧縮強度5N/mm²以上、しないなら10N/mm²以上。乾燥しやすいぶん、湿潤養生をしないほうが高い強度まで残します。
気温が低いと、せき板の存置期間は長く、コンクリートの側圧は大きくなります。どちらも「低温で大変になる」と向きをそろえて覚えると混乱しません。
出典・参考(実ページで確認)
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
誤りの選択肢は安全寸法を緩めたり(2mを3.5m、4本を2本)、取外し強度を下げたり(10N/mm²を5N/mm²)する形がほとんどです。
とくに「水平つなぎ2m」「継ぎ4本ボルト」「湿潤養生なしは10N/mm²」「25℃ちょうどは下の区分」は常連。正しい基準と条件の向きをそのまま覚えて照合してください。