鉄骨工事は、一級建築士 施工のNo.13・14で毎年2問出るテーマです。
接合の品質が安全に直結するため、高力ボルトと溶接の管理を手順と数値で押さえます。誤りの選択肢は、手順を逆にしたり数値を1か所すり替えたりしてきます。だから正しい順序・正しい値を取り違えないことが対策になります。まず高力ボルトからです。
高力ボルトは、ボルトで強く締めて生まれる摩擦力で力を伝えます。だから摩擦面の状態と締付けが管理の中心です。
| 項目 | 管理基準 |
|---|---|
| 摩擦面の処理 | すべり係数 0.45以上。黒皮(ミルスケール)を除去し、一様に錆を発生させる(またはショットブラスト) |
| 締付けの順序 | 一群のボルトは群の中央から端部(周辺)へ。一次締め → マーキング → 本締めの順 |
| 勾配座金 | 接合部材の面が 1/20以上傾斜する場合に使用 |
| トルシア形ボルトの標準長さ | 締付け長さ+余長(M22は 35mm)。本締めでピンテールが破断する |
引っかけは締付け順序の逆転です。「端部から中央へ」は誤りで、中央から端部へ締めるのは、先に外側を締めると板のすき間が中央に残るからです。摩擦面の黒皮を残したままとするのも誤りです(平成30年)。
溶接は熱で金属を一体化するため、低温割れの防止(予熱)と欠陥を生まない納まりが問われます。
| 項目 | 管理基準 |
|---|---|
| 低温時の予熱 | 気温 5℃以下では予熱する。予熱範囲は溶接線から約 100mm |
| 裏当て金の組立溶接 | フランジ幅の両端から一定距離を離した位置で行う(端部の近くは欠陥のもと) |
| エンドタブ | H形断面柱の開先溶接の鋼製エンドタブは切断せず残置する |
| 板厚差の大きい段違い | 厚い方を緩い勾配でテーパー加工して漸減させ開先で処理(盛上げで隠すのは誤り) |
| スタッド溶接の施工前試験 | 2本を試し打ちし、外観・寸法・30度打撃曲げ試験で確認 |
溶接は「弱点をつくらない」発想です。裏当て金を端部の近くで溶接したり(令和5年)、段違いを盛上げで隠したり(令和7年)すると、応力が集中して割れの起点になります。
組み立て(建方)や鉄筋との取合いでも、数値・手順が問われます。
| 論点 | 正しい記述(○)と、よくある誤り(×) |
|---|---|
| 高力ボルトの締付け順序 | ○ 群の中央から端部へ/× 端部から中央へ |
| 摩擦面の処理 | ○ 黒皮を除去しすべり係数0.45以上/× 黒皮のまま |
| トルシア形M22の標準長さ | ○ 締付け長さ+35mm/× +30mm |
| 板厚差の大きい段違い | ○ 厚い方をテーパー加工/× 溶接の盛上げで移行 |
| 予熱(低温時) | ○ 気温5℃以下で溶接線から約100mmを予熱/× 予熱不要 |
締付けは中央から端部、摩擦面は黒皮除去ですべり係数0.45以上、M22は締付け長さ+35mm、段違いはテーパー加工、予熱は気温5℃以下で溶接線から約100mm。順序の逆転と数値・納まりのすり替えに気づけるよう、手順と値を固定しておきましょう。
M22のトルシア形高力ボルトの標準長さを、締付け長さに30mmを加えた値とした。〔R7 No.14〕
×。M22は締付け長さに35mmを加えた値が標準です(JASS6)。30mmではピンテール部の突き出しが不足します。これが令和7年 No.14 の正答(誤りの肢)でした。
板厚差の大きい突合せ継手で、段違いを溶接の盛上げで滑らかに移行させた。〔R7 No.13〕
×。厚い方を緩い勾配でテーパー加工して漸減させます。盛上げで表面だけ滑らかにすると応力が集中します。
高力ボルト摩擦接合の摩擦面は、黒皮(ミルスケール)を残したまま、すべり係数0.45以上を確保した。〔H30 No.13〕
×。黒皮は除去して一様に錆を発生させ(またはショットブラスト)、すべり係数0.45以上を確保します。黒皮のままではすべりやすくなります。
気温が5℃以下のとき、溶接線から約100mmの範囲の母材を予熱して溶接する。〔基本〕
〇。低温では低温割れを防ぐため、気温5℃以下で予熱します。予熱範囲は溶接線から約100mmです。
| 年度 | No. | 正解 | 主に問われた論点 |
|---|---|---|---|
| 令和7年 | 13 | 4 | 板厚差の段違い(テーパー加工) |
| 令和7年 | 14 | 2 | トルシア形M22の標準長さ |
| 令和6年 | 13 | 4 | 溶融亜鉛めっき高力ボルト |
| 令和6年 | 14 | 1 | 建方の調整スパン・スタッド溶接 |
| 令和5年 | 13 | 3 | 溶接(予熱・裏当て金) |
| 令和5年 | 14 | 2 | 精度管理(検査と管理許容差) |
| 令和4年 | 13 | 2 | 高力ボルト・建方の管理 |
| 令和4年 | 14 | 4 | 溶接(組立溶接ほか) |
| 令和3年 | 13 | 4 | トルシア形高力ボルトの締付け |
| 令和3年 | 14 | 2 | 鉄骨工事の管理(監理者) |
| 令和2年 | 13・14 | 3・2 | 高力ボルト・溶接の管理 |
| 令和元年 | 13・14 | 4・2 | 溶接面の清掃(ミルスケール)・建方管理 |
| 平成30年 | 13・14 | 4・3 | 摩擦面のすべり係数・高力ボルトの管理 |
| 平成29年 | 13・14 | 3・2 | 溶接作業の予熱・錆止め塗装 |
| 平成28年 | 14 | 2 | 溶接部の欠陥と補修方法 |
※ 過去10年分(平成28年〜令和7年)を確認。鉄骨工事は毎年No.13・14の2問で出題され、高力ボルト・溶接・建方・精度管理がくり返し問われます(平成28年のNo.13は木工事の接合金物で、鉄骨はNo.14のみ)。令和2年以前の解説リンクは順次追加予定です。
混同しやすいポイント
一群の高力ボルトは群の中央から端部(周辺)に向けて締めます。外側から締めると中央に板のすき間が残り、密着不良になります。順序の逆転がよくある誤りです。
摩擦接合は、黒皮(ミルスケール)を残すとすべりやすくなります。黒皮を除いて錆を発生させ、すべり係数0.45以上を確保します。「黒皮のまま」は誤りです。
板厚差が大きい突合せ継手は、厚い方を緩い勾配でテーパー加工して漸減させます。溶接の盛上げで表面だけ滑らかにするのは、応力集中を招き誤りです。
出典・参考(実ページで確認)
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
誤りの選択肢は締付けの順序を逆にしたり、余長・予熱範囲などの数値を1か所すり替えたりする形がほとんどです。
とくに「締付けは中央から端部」「すべり係数0.45以上で黒皮除去」「M22は+35mm」「段違いはテーパー」は常連。正しい順序・数値を照合してください。