工事請負契約は、一級建築士 施工のNo.25で毎年出るテーマです。
約款の条文を、誰の権利・義務かという視点で押さえます。誤りの選択肢は、もっともらしい文章のまま権利者や負担者を1か所だけすり替えてきます。だから「その行為は誰がするのか・誰に対してか」を固定するのが対策になります。まず当事者の整理からです。
建築士試験で問われるのは、主に2つの約款です。当事者がそれぞれ異なります。
| 約款 | 当事者 |
|---|---|
| 民間(七会)連合協定 工事請負契約約款 | 発注者(建築主)と受注者(工事施工者) |
| 四会連合協定 建築設計・監理等業務委託契約約款 | 委託者(建築主)と受託者(建築士事務所) |
ここが最大の急所です。監理者は工事請負契約の当事者ではありません。監理者は業務委託契約に基づいて監理を行う立場で、工事請負契約には関与しません。
だから「監理者に対して〇〇を請求する」「監理者が工事の責任を負う」という記述は、当事者を取り違えた誤りになりやすいです。なお、現場代理人・主任技術者・監理技術者の氏名は、発注者に書面で通知します(監理者ではありません。平成28年)。「七会」は、日本建築学会・日本建築協会・日本建築家協会・全国建設業協会・日本建設業連合会・日本建築士会連合会・日本建築士事務所協会連合会の7団体です。
「誰に・どうする」が問われる代表が、契約不適合(旧・瑕疵担保)と契約解除です。民法の規定が土台になります。
| 場面 | 扱い |
|---|---|
| 契約不適合の修補(履行追完)請求 | 発注者は受注者に請求する(監理者ではない。民法562条・559条) |
| 発注者の任意解除 | 仕事の完成前なら、発注者はいつでも損害を賠償して解除できる(民法641条) |
| 工事用図書どおりでない部分 | 監理者の指示により、受注者の費用負担で修補・改造する |
修補を求める相手は、契約の相手方である受注者です。監理者は契約当事者でないので、監理者に修補を請求するのは誤りになります(令和5年)。発注者都合の任意解除は完成前に限られ、損害賠償が必要な点も狙われます。
名前が似ていて取り違えやすいのが「部分使用」と「部分引渡し」です。違いは引渡しを受けるかどうかです。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 部分使用 | 発注者が受注者の承諾を得て、完成前の部分を引渡しを受けずに使用すること。工事上の責任は引き続き受注者にある |
| 部分引渡し | 発注者がその部分の引渡しを受けること。管理責任が発注者に移る |
「引渡しを受けて使用するのが部分使用」とするのは、部分引渡しと混同した誤りです(令和6年)。部分使用は引渡しを受けない、と固定します。
三者の役割と責任の所在は、ほかにも次の形で問われます。
| 論点 | 正しい記述(○)と、よくある誤り(×) |
|---|---|
| 監理者の位置づけ | ○ 工事請負契約の当事者ではない/× 監理者に修補等を請求できる |
| 契約不適合の請求先 | ○ 受注者に請求/× 監理者に請求 |
| 部分使用と部分引渡し | ○ 部分使用は引渡しを受けない/× 引渡しを受けて使用するのが 部分使用 |
| 発注者の任意解除 | ○ 完成前に損害賠償して解除/× 完成後も任意解除できる |
| 特許材料の責任 | ○ 受注者が費用負担・責任を負う/× 一切の責任を負わない |
監理者は工事請負契約の当事者でない(修補請求は受注者へ・技術者の氏名通知は発注者へ)、任意解除は完成前のみ・損害賠償が必要、部分使用は引渡しを受けない、特許材料は受注者の責任。権利者・負担者を監理者にすり替える形に気づけるよう、当事者で照合しましょう。
特許権等の対象となる工事材料を使用するとき、受注者はその使用に関する一切の責任を負わない。〔R7 No.25〕
×。受注者がその使用の費用を負担し、責任を負います。これが令和7年の正答(誤りの肢)でした。
「部分使用」とは、発注者が完成部分の引渡しを受けて使用することをいう。〔R6 No.25〕
×。部分使用は引渡しを受けずに完成前の部分を使うことです。引渡しを受けるのは「部分引渡し」です。
引き渡された建物に契約不適合があった場合、発注者は監理者に対して修補を請求できる。〔R5 No.25〕
×。修補(履行追完)は契約の相手方である受注者に請求します。監理者は工事請負契約の当事者ではありません。
受注者は、定めた主任技術者・監理技術者の氏名を、監理者に書面で通知する。〔H28 No.25〕
×。氏名は発注者に通知します。監理者ではありません。当事者の取り違えに注意します。
| 年度 | No. | 正解 | 主に問われた論点 |
|---|---|---|---|
| 令和7年 | 25 | 1 | 特許材料の使用責任(受注者が負う) |
| 令和6年 | 25 | 4 | 部分使用と部分引渡しの違い |
| 令和5年 | 25 | 2 | 契約不適合の修補請求先(受注者) |
| 令和4年 | 25 | 3 | 監理業務委託の損害賠償(帰責事由) |
| 令和3年 | 25 | 1 | 不可抗力(天災)の損害負担 |
| 令和2年 | 25 | 1 | 請負代金内訳書・工程表の扱い |
| 令和元年 | 25 | 1 | 部分使用の法令手続き・費用負担 |
| 平成30年 | 25 | 2 | 監理業務委託の損害賠償(帰責事由) |
| 平成29年 | 25 | 4 | 工事完了の検査 |
| 平成28年 | 25 | 4 | 現場技術者の氏名の通知先(発注者) |
※ 過去10年分(平成28年〜令和7年)を確認。No.25は工事請負契約約款と監理業務委託契約約款から毎年出題され、三者の役割・契約不適合・任意解除・部分使用がくり返し問われます。改正年により当事者の名称(七会/旧四会)が異なりますが、論点の柱は共通です。令和2年以前の解説リンクは順次追加予定です。
混同しやすいポイント
部分使用は引渡しを受けずに完成前の部分を使うこと(責任は受注者に残る)。部分引渡しは引渡しを受けること(管理責任が発注者に移る)。「引渡しを受けるか」で区別します。
契約不適合の修補は、契約の相手方である受注者に請求します。監理者は工事請負契約の当事者ではないため、修補請求の相手にはなりません。
発注者は仕事の完成前ならいつでも損害賠償して解除できます(民法641条)。完成後はこの任意解除はできません。
出典・参考(実ページで確認)
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
誤りの選択肢は請求先や責任者・通知先を監理者にすり替えたり、責任を「負わない」と逆にしたりする形がほとんどです。
とくに「修補請求は受注者」「監理者は契約当事者でない」「部分使用は引渡しを受けない」「特許材料は受注者責任」は常連。誰の権利・義務かを当事者で照合してください。