建築士試験 解説ノート

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工事請負契約のまとめ【過去10年分】|一級建築士試験 施工の過去問・頻出ポイント

工事請負契約は、一級建築士 施工のNo.25で毎年出るテーマです。

約款の条文を、誰の権利・義務かという視点で押さえます。誤りの選択肢は、もっともらしい文章のまま権利者や負担者を1か所だけすり替えてきます。だから「その行為は誰がするのか・誰に対してか」を固定するのが対策になります。まず当事者の整理からです。

工事請負契約は誰と誰の契約か(監理者の位置づけ)

建築士試験で問われるのは、主に2つの約款です。当事者がそれぞれ異なります。

約款 当事者
民間(七会)連合協定
工事請負契約約款
発注者(建築主)受注者(工事施工者)
四会連合協定
建築設計・監理等業務委託契約約款
委託者(建築主)受託者(建築士事務所)

ここが最大の急所です。監理者は工事請負契約の当事者ではありません。監理者は業務委託契約に基づいて監理を行う立場で、工事請負契約には関与しません。

だから「監理者に対して〇〇を請求する」「監理者が工事の責任を負う」という記述は、当事者を取り違えた誤りになりやすいです。なお、現場代理人・主任技術者・監理技術者の氏名は、発注者に書面で通知します(監理者ではありません。平成28年)。「七会」は、日本建築学会・日本建築協会・日本建築家協会・全国建設業協会・日本建設業連合会・日本建築士会連合会・日本建築士事務所協会連合会の7団体です。

契約不適合の請求先と発注者の解除権

「誰に・どうする」が問われる代表が、契約不適合(旧・瑕疵担保)と契約解除です。民法の規定が土台になります。

場面 扱い
契約不適合の修補(履行追完)請求発注者は受注者に請求する(監理者ではない。民法562条・559条)
発注者の任意解除仕事の完成前なら、発注者はいつでも損害を賠償して解除できる(民法641条)
工事用図書どおりでない部分監理者の指示により、受注者の費用負担で修補・改造する

修補を求める相手は、契約の相手方である受注者です。監理者は契約当事者でないので、監理者に修補を請求するのは誤りになります(令和5年)。発注者都合の任意解除は完成前に限られ、損害賠償が必要な点も狙われます。

部分使用と部分引渡しはどう違うか

名前が似ていて取り違えやすいのが「部分使用」と「部分引渡し」です。違いは引渡しを受けるかどうかです。

用語 意味
部分使用発注者が受注者の承諾を得て、完成前の部分を引渡しを受けずに使用すること。工事上の責任は引き続き受注者にある
部分引渡し発注者がその部分の引渡しを受けること。管理責任が発注者に移る

「引渡しを受けて使用するのが部分使用」とするのは、部分引渡しと混同した誤りです(令和6年)。部分使用は引渡しを受けない、と固定します。

特許材料・再委託・その他の役割

三者の役割と責任の所在は、ほかにも次の形で問われます。

  • 第三者の特許権等の対象となる工事材料を使うときは、受注者がその使用の費用を負担し責任を負う(「一切の責任を負わない」は誤り。令和7年)
  • 監理業務は、委託者の承諾を得て一部を他の建築士事務所に再委託できるが、再委託先の行為すべてについて元の受託者が責任を負う
  • 受託者の損害賠償請求は、相手方(委託者)の責めに帰すことができない事由による場合は認められない(令和4年・平成30年)
  • 不可抗力(天災)による損害は、原則として発注者が負担する

毎年問われる論点(○が正しい・×が誤り)

論点 正しい記述(○)と、よくある誤り(×)
監理者の位置づけ ○ 工事請負契約の当事者ではない/× 監理者に修補等を請求できる
契約不適合の請求先 ○ 受注者に請求/× 監理者に請求
部分使用と部分引渡し ○ 部分使用は引渡しを受けない/× 引渡しを受けて使用するのが 部分使用
発注者の任意解除 ○ 完成前に損害賠償して解除/× 完成後も任意解除できる
特許材料の責任 ○ 受注者が費用負担・責任を負う/× 一切の責任を負わない

覚え方

監理者は工事請負契約の当事者でない(修補請求は受注者へ・技術者の氏名通知は発注者へ)、任意解除は完成前のみ・損害賠償が必要、部分使用は引渡しを受けない、特許材料は受注者の責任。権利者・負担者を監理者にすり替える形に気づけるよう、当事者で照合しましょう。

過去問の肢で確認

Q.

特許権等の対象となる工事材料を使用するとき、受注者はその使用に関する一切の責任を負わない。〔R7 No.25〕

×受注者がその使用の費用を負担し、責任を負います。これが令和7年の正答(誤りの肢)でした。

Q.

「部分使用」とは、発注者が完成部分の引渡しを受けて使用することをいう。〔R6 No.25〕

×。部分使用は引渡しを受けずに完成前の部分を使うことです。引渡しを受けるのは「部分引渡し」です。

Q.

引き渡された建物に契約不適合があった場合、発注者は監理者に対して修補を請求できる。〔R5 No.25〕

×。修補(履行追完)は契約の相手方である受注者に請求します。監理者は工事請負契約の当事者ではありません。

Q.

受注者は、定めた主任技術者・監理技術者の氏名を、監理者に書面で通知する。〔H28 No.25〕

×。氏名は発注者に通知します。監理者ではありません。当事者の取り違えに注意します。

過去問の出題一覧(一級建築士 施工 No.25)

年度 No. 正解 主に問われた論点
令和7年251特許材料の使用責任(受注者が負う)
令和6年254部分使用と部分引渡しの違い
令和5年252契約不適合の修補請求先(受注者)
令和4年253監理業務委託の損害賠償(帰責事由)
令和3年251不可抗力(天災)の損害負担
令和2年251請負代金内訳書・工程表の扱い
令和元年251部分使用の法令手続き・費用負担
平成30年252監理業務委託の損害賠償(帰責事由)
平成29年254工事完了の検査
平成28年254現場技術者の氏名の通知先(発注者)

※ 過去10年分(平成28年〜令和7年)を確認。No.25は工事請負契約約款と監理業務委託契約約款から毎年出題され、三者の役割・契約不適合・任意解除・部分使用がくり返し問われます。改正年により当事者の名称(七会/旧四会)が異なりますが、論点の柱は共通です。令和2年以前の解説リンクは順次追加予定です。

混同しやすいポイント

部分使用 と 部分引渡し

部分使用は引渡しを受けずに完成前の部分を使うこと(責任は受注者に残る)。部分引渡しは引渡しを受けること(管理責任が発注者に移る)。「引渡しを受けるか」で区別します。

修補の請求先=受注者(監理者ではない)

契約不適合の修補は、契約の相手方である受注者に請求します。監理者は工事請負契約の当事者ではないため、修補請求の相手にはなりません。

任意解除は「完成前」だけ

発注者は仕事の完成前ならいつでも損害賠償して解除できます(民法641条)。完成後はこの任意解除はできません。

まちがえやすいポイント

誤りの選択肢は請求先や責任者・通知先を監理者にすり替えたり、責任を「負わない」と逆にしたりする形がほとんどです。

とくに「修補請求は受注者」「監理者は契約当事者でない」「部分使用は引渡しを受けない」「特許材料は受注者責任」は常連。誰の権利・義務かを当事者で照合してください。

次に確認するページ

出典・参考(実ページで確認)

  • 民間(七会)連合協定 工事請負契約約款(令和5年1月改正)=発注者と受注者の契約/四会連合協定 建築設計・監理等業務委託契約約款(令和2年4月改正)=委託者と受託者の契約:日本建築士事務所協会連合会ほか
  • 「七会」=日本建築学会・日本建築協会・日本建築家協会・全国建設業協会・日本建設業連合会・日本建築士会連合会・日本建築士事務所協会連合会
  • 民法641条(注文者は仕事の完成前は損害を賠償して解除できる)・民法562条/559条(請負の契約不適合の追完請求は請負人=受注者へ)
  • 建築技術教育普及センター「一級建築士試験 学科の試験 学科V(施工)問題」各年度、正答は同センター公表の正答肢による
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編集・解説

建築士試験 解説ノート編集部

建築業界の実務経験をもとに、一級・二級建築士試験の「施工」を過去問の問われ方から整理しています。運営者情報

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